昨今LINEやfacebook、Webアプリなどの至るところで見かけられるようになったチャットボット。同じ業界でも先進的な企業では導入が進んでおり、「そろそろウチもやったほうがいいのではないか…?」そんな声が社内からちらほらあがってきている、という方も多いのではないでしょうか。
ただ、導入前にその初期設定に関して気になっている方もいらっしゃると思います。
導入目的は、カスタマーサポートや業務効率化、マーケティング施策としてなどさまざまでしょう。まずはどんな流れのシナリオを作れば良いのか、そこにどれだけの工数がかかるのかを把握しておくことが大切です。
そこで今回は、チャットボットの作成術をテーマに、その実態や作成テクニックを順を追ってご説明します。
“AI(人工知能)型とルールベース型のどちらでもシナリオは重要!”
すでにチャットボットを検討している方であればご存じの通り、チャットボットには大まかに2つのタイプが存在します。1つ目は、一問一答を原則として正答率などから自動で会話内容を調整して提示する、AI(人工知能)による機械学習型(以下AI(人工知能)型)です。2つ目は事前に設定しておいたフローにしたがって、選択肢を提示することで会話が進む、ルールベース型です。
▼AI(人工知能)女子高生「りんな」
▼AI(人工知能)ルールベース型お客様サポート「LOHACOマナミさん」
AI(人工知能)型の場合、最初に約300程度のFAQの設問と回答を設定します。いわゆる教師データです。そこから約1か月ごとにそこで反応した内容が正解か、不正解かを精査して、より正しい教師データをAI(人工知能)に設定することを繰り返していきます。
上記に事例としてあげている「LOHACOマナミさん」は、約1年程度調整を続けて、ある程度FAQ対応として信頼できる回答ができる状態になったそうです。最終的には対応できる設問のパターンは当初の3倍を超えており、大きな将来性を期待できるものの、しっかりと運用できる状態になるまで時間や工数を割く必要があるのがAI(人工知能)チャットボットです。
一方で、ルールベース型の場合は、事前にどんな選択肢をどのタイミングで提示するかという会話フローさえ作成しておけば、想定通りの返答をさせることができます。一般的に、この会話フローが「シナリオ」と呼ばれています。
ユーザー像をしっかり捉えたシナリオが作成できれば、ユーザーの言葉のニュアンスや言い回しの違いに左右されることなく、精度の高い返答を導入当初から返すことができ、導入の成果が感じやすいのがルールベース型の強みといえるでしょう。
しかし、導入当初から成果を感じやすいルールベース型でも、AI(人工知能)型で対応できた一部の設問は取りこぼす可能性があるので、どちらも一長一短です。
そのため、AI(人工知能)型であってもルールベース型の機能が使えたり、ルールベース型でも一問一答方式でも回答できるなど、両方の長所をあわせもつ複合型のチャットボットが現在では主流になっており、実は「LOHACOマナミさん」もそのような設計です。
どちらが主体のチャットボットを選ぶにせよ、シナリオ作成スキルは共通して求められるようになってきています。
“シナリオ作成の基本的な流れ”
シナリオ作成の基本的な流れは以下の4つのSTEPからなります。順に説明いたします。
・STEP1.チャットボットを使用してほしいユーザーのターゲットを決める
まずはどんなユーザーに使われるチャットボットを目指すかを考えることが大切です。このSTEP1と次のSTEP2がチャットボット導入の成否を左右します。
チャットボットのターゲットが決まれば、このターゲットのどのような課題を解決できれば、どういった数字に影響が出るのか?、という成果のKPIを決めることができます。
これが定まらないままに運用を始めてしまい、導入から数か月、数年後にその価値を評価できないという問題に直面する企業も多く存在しています。ターゲットの検討は大事なポイントになります。
ターゲットを想定し「おそらくターゲットはWebページでこんな行動をしているだろう」という仮説をデータと共に示すことができればよいでしょう。
ちなみに、あえてターゲットを絞りたくない、ユーザーの動向を知りたい、という運用方針も考えられます。その場合は、想定されるすべてのユーザーに対して使われることを目的にするか、どんなユーザーに使われたかを後から分析できる工夫をすることをおすすめします。
・STEP2.ターゲットのどんな悩みを解決するのかを決める
このフェーズはチャットボットの利用率・満足度に直結するため特に重要です。
STEP1で想定しているターゲットが、どんな状況でどのような課題に直面しているのかを考えます。それに対してチャットボットがどのような課題解決になるのかを顧客向けに明示できる状態にしておきましょう。
チャットボットを検討している方の多くは、STEP2のイメージを持っている方が多いと思いますが、顧客に言語化して伝えられる状態まで具体化することが大切です。それだけで利用率が2~3倍程度変動する可能性があります。
・STEP3.シナリオの骨組みをつくる
STEP1、STEP2の内容をもとに、シナリオの骨組みを作成します。ターゲット像とその課題が明確にイメージできていれば、それほど作成に手間取らないと思われますが、このフェーズでは利用するチャネル毎の仕様や制限への理解が大切です。
例えば、LINEチャットボットの「ボタンメッセージ」という仕様であれば、通常は4つまでしか選択肢を作ることができません。5つ以上の選択肢がある場合、別の表示形式をとらなければならないなど、事前にチャネル別の制限を理解した上で骨組みをまとめることで、よりスムーズに実装まで進めることができます。
・STEP4.シナリオにコンテンツをあてはめ、作成していく
3で作成した骨組みに基づいて、シナリオを実際に作成する作業に入ります。利用されるサービスベンダー各社の提供サービスの内容によって変わりますが、自社で作成しなければならない場合は、専門的な知識がなくても作りやすいUIのものを選ぶことがおすすめです。
導入時のシナリオ作成を代行してもらえる会社は多いものの、後になって「作成したシナリオの修正に手間がかかる」「修正作業が専門的すぎて都度料金が発生してしまう」という不満は、導入したチャットボットの解約検討理由として挙がることが多いものです。
導入後の運用も見据え、自社で扱える範囲のサービスを選定したほうが長期的なメリットは大きいと考えられます。
“手軽に始めたいなら、2つの鉄板会話シナリオから選ぼう!”
「チャットボットって、思ったより難しいツールなんじゃ…?」そんな印象を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。でもご安心ください。目的別に実績のある鉄板会話シナリオをご紹介します。これを使用することで、よりスムーズなチャットボットの導入を実現できるでしょう。
・リード獲得の活用編
【鉄板】診断型シナリオ
Webサイト上で、複数の選択肢が提示されている場合にオススメのシナリオです。
初回来訪者向けのコンテンツ誘導型は直帰率改善、検討者層向けのメニュー紹介型はコンバージョン率改善と、汎用性の高いテンプレートです。
例えば、どのプランにするかやどんなサイズ感にするか、オプションのメニューは何にするかなどがあります。
ユーザーが迷いやすいポイントを会話シナリオに落とし込むことで、短期でチャットボット導入成果を見込むことができるでしょう。とある企業では、実装後にCVRが130%程度向上した例もあります。
▼参考チャットボット設計例
freee株式会社様:https://www.freee.co.jp/kojin/price/
・顧客満足度向上編
【鉄板】季節性のよくある質問シナリオ
ユーザーの悩みに答えるカスタマーサポート型のシナリオは、よくある質問をベースにします。とくに多いお問い合わせを担当者がシナリオ化していくといった作成フローになります。
こちらはよくある質問をデータベース化している企業であれば、すぐにデータを転用して導入ができる場合が多く、経験のある担当者を専任でおける場合については、導入のハードルが生じることは少ないでしょう。
より工数削減効果を出すためにひと手間加えるなら、シーズナリーなお問い合わせ内容をシナリオの冒頭に提示しておくことをおすすめします。これを徹底した企業では、ピーク時に想定していた電話問合せ数を80%削減したという実績が出ています。
▼参考チャットボット設計例
むさし証券株式会社様:https://synal.io/interview/musashi/
“まとめ”
ターゲット選定や価値仮説など、一見難しそうにも思えるチャットボットのシナリオ作成。
もちろん目的や本質がぶれないことは重要ですが、はじめて導入するツールであれば、
作りこみに時間をかけるよりも、ミニマムでスタートしてみることで見えてくるものを改善していくのもまた一手でしょう。
「初期設定の工数が懸念で、導入に尻込みをしてしまっていた…」そんな方は、まず鉄板会話シナリオからスタートすることを検討されてはいかがでしょうか。