2020年6月、オンライン上で行われたマーケティングカンファレンス「MOC2020(Marketing Online Conference 2020)」。当日は「withコロナ時代のマーケティング」をテーマに、様々な視点でのトークセッションを開催されました。この記事では、「Yappli × b→dash guest. SHIBUYA109 “Loyalty”の作り方~コロナが変えた市場で「お客さま」に支持され続けるためのマーケティングの新法則~」のセッション内容をお伝えします。
未曾有の市場変化の中で、売上を上げ続けるには様々な方法がありますが、「既存のお客様」との関係性を深めること、すなわち「ロイヤリティ」は非常に重要なテーマです。本セッションでは、数百社のマーケティング支援を行ってきたb→dash、そして流行を生み出し続けるSHIBUYA109がロイヤリティ構築の実践知および事例が語られました。
“登壇者情報”
【スピーカー】
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント オムニチャネル事業部 リーシング部 新規リーシング担当
山崎 彩夏 氏
大学卒業後、外資系アパレル会社に就職し販売員を経験。その後SHIBUYA109へ転職、ECサイト運営に携わる。2017年4月に会社が分社化し株式会社SHIBUYA109エンタテインメントが設立されると同時に出向。MD担当として主にオムニチャネル業務に従事。SHIBUYA109公式アプリの立ち上げ・運用を担当する。また、マーケティング研究員も務める。2020年4月以降はオムニチャネル事業部にリーシング事業部で、新規リーシング業務を中心に手掛けている。
株式会社フロムスクラッチ 執行役員CMO
三浦 將太 氏
データを使ったマーケティング、ビジネスのグロースをトータルでサポートできるクラウドサービス「b→dash」のマーケティング統括を務める。マーケティング責任者の傍ら、社会心理学・社会情報学といったテーマをメインに研究に取り組み、論文も執筆。「インターネット、スマホやデジタルデバイスを持っていると子供のメンタルヘルスはどうなるのか?」、「どう情報教育がうまくいくのか?」、「人の偏見、ステレオタイプ、バイアスとは?」といったテーマでの研究にも携わっている。
【モデレーター】
Mtame株式会社ヤプリ マーケティング本部 マーケティングスペシャリスト
島袋 孝一 氏
株式会社パルコ、キリン株式会社でのデジタルマーケティング担当を経て、2019年1月に株式会社ヤプリにマーケティングスペシャリストとして参画。スマホアプリを手掛けるスタートアップ企業であり、SHIBUYA109のブランドアプリをはじめ400社以上のアプリを手掛ける。テクノロジーを活用して様々なブランドを支援し、顧客とどう向き合っていくか、というテーマに取り組んでいる。
“「ロイヤルカスタマーとどう付き合っていくか?」の実践例”
SHIBUYA109の実践例
Twitterの運用スキームの変更で、売上向上
SHIBUYA109 山崎氏:
我々のブランドステートメントは「Making You SHINE!(メイキングユーシャイン)」です。「アラウンド20」つまり15~24歳をターゲットとし、新しい世代の今を輝かせ、夢や願いを叶える、といった想いを込めています。
弊社にはTwitter、Instagram、LINEといろいろなSNSアカウントがあり、加えてYappliと一緒に作ったアプリも運用しています。中でもTwitterが一番フォロワー数が多く、約22万人いてファン度もライトです。その「Twitterをどう運営しているのか」をお話します。
館内のフロアを回っていると様々なブランドから「こんな情報をSNSで発信してほしい!」という依頼を沢山いただきます。しかし、それを全部出してしまうと何のSNSかよく分からなくなってしまう。PRではなく、「売りたい!」という気持ちが前面に出て企業感が出てしまいます。
そこで、スキームを全て変えました。今は、Twitter担当者が各部署にヒアリングし、本当に必要なものだけをTwitterに流すようにしています。共感コンテンツの発信を中心に行っており、単なる企業アカウントから「中の人が居る」という投稿にシフトし、お客様とのコミュニケーションを強化しました。
まず、投稿は「おはよう」の挨拶から始まります。それに対してお客様からリプやDMなどを多くいただいていて、1日数十件はリプを返しています。109に対する質問・クレームも寄せられますが、一つ一つ丁寧に返信していき、一対一でのお客様との対話を行っています。
Twitterのリプなどソーシャル発信への反応が情報分析ツールに
SHIBUYA109 山崎氏:
109はターゲットが若年層のため、ハウスカード(※商業施設の自社クレジットカード)が無いので、情報の分析ツールがありませんでした。その分析を、ソーシャルで補完しているという訳です。お客様の実際の声を拾い、「お客様がどのようなことを考えているのか」、「どのようなことに興味関心があるのか」といった定性的な分析をしています。
リプしていただいたお客様が普段どのようなことを呟いているのかも見ています。興味関心や、どのようなアーティストが好きかなど、日ごろのツイートから分析して店頭施策に活かしています。
例えば、SHIBUYA109の8階にはTWICEなど、韓国アーティストとのコラボ企画を展開するエンタメ区画があります。店頭コラボ実施のタイミングでそのアーティストの誕生日や趣味嗜好を調べてTwitterでつぶやくと、ファンの方がリプしてくれるんです。そうするとお客様と会話が行え、より深くお客様を知ることができます。こういった施策を行い、「アラウンド20」が興味のあることを調べてTwitterで発信しているというわけです。
Twitter上のコミュニケーション施策で話題性作り
SHIBUYA109 山崎氏:
お客様とTwitter上でコミュニケーションを広げる施策は他にもあります。館内1階にある大きなサイネージから動画を流しているのですが、そのムービーを撮影し、SNSに流したりもしました。渋谷に来れない方や、地方の方にも楽しんでいただくために行った施策です。
また、「フォロワーのフォロワーも獲得したい」という狙いから引用リツイートを狙った投稿もしています。
109は昨年ロゴの変更を実施し、40年間使用していたたものを一新しました。その際にも「ロゴを卒業します」とTwitterで呟きました。そのインプレッションは約250万にも上り、かなり話題性のある投稿に。リプしてくださった方の中には、昔109に来館いただいた方がとても多く、「さみしい」や「どういったものになるんだろう」といった反応もありました。
実際ロゴが変わった後もTwitterで配信し、今度は若年層の方から「イメージ変わって可愛いじゃん」といったポジティブな反応も得られました。ロゴ変更は大変でしたが話題性も大きく、成功したと言えます。ちなみにロゴは公募で、お客様に応募していただいたものをセレクションという方式で選定しました。なので、企業が一方的に決めたものではありません。
SNS経由の売上が前年比140 %。SNSからECへの流入が前年比2.7倍を達成
SHIBUYA109 山崎氏:
こういった施策を行った結果がどうだったかと言うと、SNSの総フォロワー数は1年間で2倍になりました。前年比140%を達成。SNSからECへの流入も前年比2.7倍となり、数値にも効果が表れています。
様々な企業のSNSを見ていて、商品写真を上げるだけでは「企業臭」がするなと思うことも多いです。お客様に寄り添った運用をすることが施策として最適なのではないかと感じています。
また、弊社ではInstagramよりTwitterの方がカジュアルに運用できており、「お客様との双方向コミュニケーションに活用して成果を上げている」と言えます。
Instagramは始めたタイミングが遅かったことと、発信内容の選別に時間や手間がかかる印象です。Twitterは文字べ―スなので「中の人」感を出して、よりクイックにネタを投入できるという利点を感じています。
「中の人」で言うと、Twitterの人格、Instagramの人格はそれぞれ若干分けています。Instagramのお客様は感度がかなり高く、Twitterのお客様とターゲット層が違うという点からです。
キーポイントはSNS運用方針自体を内部で変えたことが成功因子。「店の中にある情報を出す」ではなく、「お客様に寄り添った情報を出す」という方針です。
b→dashの実践例
グロースのフレームワークに当てはめて考える
b→dash 三浦 氏:
私からは「どのようにレベニュー(売上・収益)を上げていくのか」や「会員のロイヤル化を拡大し、売上が上がった事例」をお話します。
Growth methodは我々が提唱しているフレームワークで、どの企業でもご利用いただける形に編集しています。
このフレームワークには大きく6つのステップがあります。「Funnel(ファネル)」「Bottleneck(ボトルネック)」「Miroscope(マイクロスコープ)」「Reverse(リバース)」「Unrefusable (アンリフューザブルオファー)」「Operetion(オペレーション)」です。
これらをサクセスケースであるアパレル事例に当てはめて、一つずつ説明していきます。ターゲット顧客は30代含む若年層で、年商規模は約200億円、ユニーク会員数は200万人と、比較的大きな規模の企業です。
数字を細かく分析し、不調要因を知る
まず「Funnel」とは、どこの企業も既に取り組まれていることだと思いますが、認知してから再購入するまでを細かく数字で分解する作業です。「量」と「率」の観点で細かく操作可能な変数に変えていきます。伸びている会社は、数字の関連性の分析を徹底的にやっています。
続いて、「Bottleneck」。一番水詰まりが大きいのはどこなのか?ボトルネックの制約に、アウトプットが制約を受けるというものです。成功事例のアパレル顧客では「ロイヤル化」に水詰まりが大きかったことがわかりました。
ここで「ロイヤル化」についてですが、大事なのは「ロイヤル化」の定義です。成功事例のアパレル会社では「年4回以上購入する顧客」と定義しました。年間4回以上買う顧客は、そこからさらに購入回数も多くなりますし、SNS投稿も増えます。そして、プロパー商品(非セール商品)をご購入いただける傾向があります。
3つ目は「Miroscope」。言葉通り、顕微鏡で覗くように数字を細かく見ていくことです。自社専用データ統合基盤を構築し、会員ごとに取得データを紐づけてボトルネックの不調要因を「なぜ、この数字がここで止まっているのか?」という観点で細かく見ていきます。
ここでは、大きく3点の軸があります。
まず「顧客軸」。年齢など属性別にセグメントを切って、どういった層のロイヤル化が高いのかを見ます。
次に、「商品軸」。どのような商品を買っている人がロイヤル化が高いのか?という軸です。
そして、「行動軸」。この軸では、ロイヤル化の高い顧客は、「どのようなページを閲覧しているのか」、「流入経路はどこなのか」、「どのようなSNSに反応しているのか」などを見ます。
統合基盤の中に様々なデータを収集する必要がありますが、その基盤を整えた上で「Miroscope」に取り組むとかなり細かく分析が行え、施策に転じやすくなります。成功事例だと「年間4回以上買うロイヤル顧客のうち、7割以上の人が機能性インナーを買っている人」でした。一方、「年間購入回数3回以下の方は、機能性インナーを買っている割合が4分の1以下」でした。
仮説を立て、即実行
ここから「機能性インナーを買うと、ロイヤルカスタマーになるのか」という仮説を導き出しました。その後、10名中4名程が追加購入していることも分かりました。
尚、この事例から仮説の因果を特定しようとすると多くの時間がかかってしまうので、仮説を立てたら早急に施策に移すことが重要だと分かります。
次が「Reverse」。「Bottleneck」について先述しましたが、その「逆側」の数字に注目することもポイントとなります。
「機能性インナー購入がロイヤル化につながる?」という仮説に対し「何故購入しないのか?」を徹底的に見ていきます。25%の顧客は機能性インナーの購入に至っているが、購入しない75%についてなぜ購入に至らなかったのかについて理由を分析していくというものです。
購入していない方に直接クーポン付きのアンケートを送り、「なぜ購入に至らなかったのか」についてお伺いしました。お客様からの返答は、「そもそも認知していない」や、「興味がない」、「口コミが少ないから」などがありました。
「買わない理由」を徹底的に潰していく
ここまで分かれば、あとは簡単です。「買わない理由」を徹底的に潰す施策を打っていきます。「認知拡大」や、「商品ページ内のレビューの充実」といった実際の取り組みに移していきます。
続いて「Unrefusable Offer」。日本語にすると「絶対に断れない出会い」という意味です。
お客様が「ちょっとこれ高いな」と思っている場合、「安くする」ことで買わない理由がなくなります。
先述した「Reverse」の分析で「買わない理由」が分かったら、断れない提案をどんどんしていきます。商品を認知されていない場合はWeb接客の増加や、電話で案内を入れるなど、知らせるための施策を打っていきます。
「商品ページに魅力がない」や、「信用できない」場合は、信用を増やすような口コミを増やしたり、コーディネート写真を増やすなどの「買わない理由」をなくす活動をひたすら繰り返していきます。すると数字は向上していきます。
徹底した日次管理で数字を確実に上げる
最後は「Operetion」、徹底的なKPIモニタリングです。施策を打った際に数字がどう変わったか徹底的に日次管理していくと数字は上がっていきます。「口コミ数が信頼獲得に繋がって、機能性インナー購入に繋がるかもしれない」という仮説を立てたら、「日次で口コミ数を何件増やす」をKPIに設定して全社、チームで動いていきます。すると確実に数字は向上します。
このようなことを地道に取り組んで成功した、という事例です。
100社あれば100事例あり。いかに打ち手を実行できるかがカギ
ここまで、グロースメソッドについて話しました。要点をまとめると、まず「自社にとってのロイヤル顧客の定義とは何かを考え、正しく定義することが非常に重要」という点です。考え方、分析方法はたくさんありますが、正解はありません。100社あれば100事例あり、狙っている数字が違えば得られる反応も違います。他社の成功事例を鵜呑みにしないことが大切です。
続いて、「何をやればどれだけ数字が上がるのか。ある程度関係性を理解するとモニタリングしやすくなる」という点についてです。「今月、このチームでは、この数字を徹底的に上げていこう」という具体的な目標を設定できれば、必然的、最終的にKPI・KGIも上がっていきます。
ここまで体制づくりができたら打ち手の数、そして、どれだけモニタリングしていけるかが勝負になっていきます。
打ち手の数自体をKPIに置いているクライアント様も多くいらっしゃいます。例えば、「認知を増やすための施策アイデアを出し」や、「このチームで1週間に施策を何個作ろう」などですね。多く打った施策の中に、良い施策も出てくるので、それを実行に移すと成果に繋がることもあります。
Yappliの実践例
109では入館者数も計測
Yappli 島袋 氏:
109でも様々な数字を追っているかと思います。シンプルに考えると「客数」「単価」「頻度」などでしょうか。この他に注力して、追っている数字はありますか?
SHIBUYA109 山崎氏:
「SNSのファン数」や「アプリDL数」に加え、弊社は「入館者数」を注力して追っています。各店舗で何名購入されたかは分かりますが、何名店舗に来たかは分からないので、入館者数について何階から何名いらっしゃったのかをしっかり数値として追っています。地下2階を2019年6月にリニューアルし食べ歩きメインフロアにしたところ、地下2階からの入館が増えました。「どこの入り口から人が増えていて、そこに何を置けば良いのか」というのを評価して見ています。
また、109はビルを1棟まるごと運営しており、その中に約120のテナントが入っています。そこへどう貢献するか可視化する目的もあります。
“データを使ってどうロイヤルティを高めるか”
アプリ開発の目的は、リアルとデジタルの架け橋
SHIBUYA109 山崎氏:
SHIBUYA109では、「リアルとデジタルの架け橋」を実現するためにアプリを開発しました。
もともとECサイトが109公式サイトと別物として存在していたのですが、分社化の際にサイトを統合。その際に、ターゲットが若年層であるにも関わらず、アプリがないことに疑問を持ち、上長に相談を持ちかけました。オムニチャネル事業部として、ECとリアルの垣根をできる限りなくしたいという想いもありました。
ご来店してくださったお客様が地方に帰っても、「また109に行きたいな」と思っていただきたいと考えています。ですが、地方のお客様はいつでもすぐにご来店していただくことは難しいので、なるべくECでのお買い物を楽しんでいただきたいと考えています。あるいは、109で購入することにメリットを感じ、また109に足を運ぶ。お客様にはその2極があると思っています。
開発の際、Yappliを選んだ理由は管理画面が初心者でも操作しやすい簡単な仕組みになっているところが決め手でした。
アプリからの配信内容は、「リアル店舗のイベント情報」や「ECの施策情報」、「来店時に特定のブランドで使えるクーポン配信」といったものです。109のスタッフが「アプリの『お気に入りブランド』に登録してください」とお客様にお声がけするんです。すると、お客様は好きなブランドのお気に入り登録をしてくださるので、ECでブランド施策を行う際にセグメントを絞ったECの施策情報をプッシュ配信をすることが可能です。
お客様の好きなブランドや、必要な情報をセグメントしてプッシュする。全館でたくさんのブランドがあるので、お客様に合った情報をご提供したいという考え方に基づいています。
アプリのDL数は15万人。お客様には居住地、年齢、性別、よく行くマルキュー、好きなブランドなどを登録していただきます。ハウスカードが無いのでアプリ上に情報を登録していただいて分析に役立てています。
109ラボの調査で、世間で売れるモノとマルキューで売れるモノの乖離を発見
SHIBUYA109 山崎氏:
109ではマーケティングも強化しています。「109ラボ」という2018年5月に設立されたマーケ研究機関があり、「アラウンド20」について調べる部隊です。
来館したお客様に、多い時は約100名に声を掛け、どのブランドに来店してどのような商品を購入しているかを109ラボのスタッフがヒアリングをします。そのリサーチ結果をまとめて、現場に落とし込んでいきます。
グループインタビューも定期的に行っています。現状では、オフラインで行うことは難しいので、オンラインで実施しました。このグループインタビューでは、例えば「就活女子」などテーマを決めて、それについて深堀りしていくといった内容で行っています。このような取り組みで得られたデータを今後、マーケ事業としてますます活かしていきたいと考えています。
マーケティングデータはたくさんありますが、あまり現場に活かせていないことが弊社としての課題でした。
例えば8階にはエンタメ区画があり、地下1階には韓国ブランドや小さなDtoCブランドが入居し、スタッフを配置できないけれどモノを売りたいテナントをターゲットにした区画があります。他にも、館内で突発的に区画が空くこともあるので、そういったスペースでのポップアップに109ラボで調査した内容を落とし込んでいきたいですね。
109のお客様は流行に敏感です。コロナ禍で世間一般では「洋服や化粧品を購入しない」と言われていますが、109ラボで調査したところ、口紅などが売れていることがわかりました。
世間で売れているものと、109で売れているものの乖離があるんですね。ターゲットを絞っているので、その方たちが何を欲しがっているのか、ポップアップは速く埋めるようにスピーディーに動くことが大事だと思っています。
「来館することに価値を与えられるか」がポイントになります。それは、モノを売るだけではありません。コロナ禍で、お客様にとってはリアル店舗に行けることが喜びになっています。お客様にとって109に行けることが「喜び」、「楽しみ」と思っていただけるような館内にしていきたいと考えています。変化にいかに対応できるかが弊社のロイヤルティを上げるポイントではないかと捉えています。
自社独自のロイヤル化定義をしていくこと
b→dash 三浦氏:
先ほども述べましたが、ポイントは「自社のロイヤルティを正しく定義する」ということに尽きます。自社でとにかくここに一番パワーを投入してロイヤル化、ロイヤルカスタマーの定義を作る事。他社事例を鵜呑みにしても数字は上がりません。
フレームワークの話の中で「Miroscope」を挙げました。ファネルを分解してボトルネックを見つけることが大前提です。そして様々なデータを掛け合わせ、解像度を細かく見ていく中で真因を発見すること。
ここの分析が甘いと、どこの会社でも行っているような施策になってしまい、数字は上がりません。様々なデータを掛け合わせられるようなデータ統合基盤は余裕のある際に経営者や上長の方が意思決定をして導入を進めることをおすすめします。自社でDXの意識が薄いようであれば、現場から言っていくことも考えましょう。
そして、具体的に成果が上がるノウハウとは「絶対に断れない提案を考える」こと。これは、人間の頭でしか考えられないことです。企画チームの全リソースを全て投入しても良いぐらいです。「なぜユーザは自社の望む行動をしてくれないのか?」そこには必ず理由があるので、それを特定してください。その理由が発生しない仕組みや、提案を作る。そこには、ユーザーの声も重要になってきます。
ロイヤリティの定義には、大きく3つの方向性があります。
①Economics(購入額、高粗利商品の購入額など)
②Action(購入回数、来店頻度、Webアクセス回数など)
多くの企業は①×②の掛け合わせで考えています。
最近の流れとしては、
③Psychology(NPS=推奨意向度、継続利用意向度)を重視したほうが良いのではないかという考え方もあります。心理傾向でロイヤル顧客か、そうでないかを判断することが必要だという考え方です。
②と③の組み合わせで
「推奨発信行為(=SNSで発信してくれる人をどう増やすか)」なども考えられます。
繰り返しになりますが、自社独自のロイヤル化の定義をしていくことが重要です。
これは、様々な企業と取り組みを繰り返す中で得られた教訓です。
「ロイヤルエコノミクス」という考え方
b→dash 三浦氏:
「“ロイヤル”エコノミクス」という考え方があります。まず、「ユニットエコノミクス=自社商品で売り上げを上げる最小単位」を考えてください。
「何をすればロイヤル化が何%増えるのか?」「ロイヤル顧客が1人増えるとどれぐらいのレベニューが生まれるのか?」という自社の方程式を持ち、自社内で数字を押さえておくことが大事です。
「どれだけ投資をすれば、どれだけ数字が上がるのか?」、「この投資により、上がった成果でお客様に対してさらにこんな取り組みができる」、「本当にお客様のことを思うなら次はこんな施策を打とう」といったことを次々に考えられるようになります。
まずロイヤル化を考えるのであれば、こういったエコノミクスを自社内で正しく捉えること。
ここまで体制づくりが整ったら、資源配分や意思決定もできます。ロイヤル化専門チームの立ち上げや、予算を付けるなどですね。
ここで初めて勝負が変わっていきます。とにかく、ただ他社事例に真似しているだけでは失敗してしまいます。まずは自社のエコノミクスを捉えることを意識していきましょう。
“お客様とどう繋がるか、可視化すること”
Yappli 島袋氏:
そもそもロイヤル化を捉えるにあたって、いろいろな手段がありますね。流通であればハウスカード、紙のDMもあります。今はSNSでお客様と繋がるなど、デジタルツールもありますよね。お客様、さらにはロイヤルカスタマーと、どう繋がるか可視化することが必要です。
マーケ界隈でよく聞くパレートの法則(=80:20の法則)という考え方もあります。アプリや、データの活用といったツールを活用してお客様との繋がりを可視化し、レバレッジを効かせて売上を支える顧客に育てていくことを意識したいですね。
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