こんにちは、ギブリー大熊です。
新型コロナウイルスによる社会影響は想定をはるかに超え、様々な課題を企業へ突きつけています。例えば、これだけテクノロジーが発達した中で起きた「トイレットペーパーの品切れ問題」。在庫のトレースや情報統制が取れなかったために、オイルショック当時と同じ「買い占め」という現象が起きてしまいました。
このような事象は、今後再度パンデミックが起きた際に私たちがどう対応すべきかを浮き彫りにしてくれたのではないかと感じています。
今回の影響を受け、店舗を運営されている小売店の方々は大きくデジタルへ舵を切らなければいけなくなったのではないでしょうか。
オフラインで消費者と向き合うことが困難になったことで“企業はどのような変化を取る必要があるのか”を考察していきたいと思います。
“消費者の変化”
皆さんも感じていらっしゃると思いますが、消費者の購入体験フローが大きく変化しています。
1.オフラインでの買い物が困難
2.収入源が不安定になり、買い控えが進んだ
3.そもそもお金を使う場所が限定され、購入意欲が減退している
このようなことが、今回の新型コロナウイルスによる消費者への影響により、アフターコロナも同じような事象が起こる可能性があります。例えば下記のグラフをご覧ください。
引用元:https://www.ey.com/ja_jp/consumer-products-retail/how-covid-19-could-change-consumer-behavior
特に「嗜好品」と呼ばれるカテゴリーについては、「より慎重に選択をする」というアンケート結果となっています。
これまでは気軽に購入をしていたお客様も判断が慎重になったことで購買プロセスが複雑になり、リードタイムも長くなります。つまり、「購入後の結果までを考える」といったより高い意識を持ち、選択するようになっていくと言えるのではないでしょうか。
企業は「商品を消費者に選んでもらうための価値提供」を改めて考える必要があるということです。
“企業の変化”
では、企業側はこの消費者の変化を受けてどのように対応すべきでしょうか。
他社と比較されても選ばれるためにすべきこと、それは「消費者の体験価値をあげること」だと弊社では考えています。つまり、「機能的価値」や「金銭的価値」よりも「体験価値」をいかに伝えるか、ということです。
いわゆるCX(カスタマー・エクスペリエンス)という文脈で話されることも多い「体験価値」ですが、今回の影響を受けて気軽に購入しなくなった消費者は1つの意思決定に対してより深い共感を求めるようになります。
では、どのようにすれば「体験価値」は向上するのでしょうか。
ここからは2つの体験価値向上施策について深掘りしていきたいと思います。
①ブランドストーリーをより重視した情報設計
企業は、「なぜ自分はこの商品を購入するのか」という心理に、共感されるコンテンツをいかに作成できるかで、「選ばれる」基準が生まれていきます。
例えば、同じ価格で機能差もない商品Aと商品Bがあったとします。
ですが、Aは“大量生産”、Bは“職人の手作り”だとしたら消費者はどちらを購入するでしょうか。こちらは極端な例ですが、意思決定の数が減っている分、機能的価値や金銭的価値よりもブランドストーリーは大切になります。
②「購入までの体験」の向上
消費者の購入プロセスが長くなるということは「店舗体験」以外で商品の情報収集が頻繁に行われている可能性が高いということになります。消費者が最終購入決定を行うまでに、下記のようなことが想定されます。
1.なぜ自社の商品に興味を持っているのか
2.態度変容はいつ行われるのか
3.懸念点は何か
このようなカスタマージャーニーを元に、複数のタッチポイントを考察する必要があります。特にこのタッチポイントを考える上で、デジタル施策が外せなくなってきていると言えるでしょう。
昨今では、タッチポイントを作る手段も大幅に増えています。中でもインフルエンサーを中心にした動画系SNSは、企業と消費者のコミュニケーションをプライベート化し、「どの企業が」ではなく「誰が」発信をしているかの優先順位をあげています。
上記から言えることは「消費者任せにしてしまうと、意思決定を行いにくくなる」ということだと考えます。良い商品を作れば売れるという時代ではなくなってしまっているということが分かります。
そのため、より自社のペルソナを明確化し、ユーザー一人ひとりに対して最適なアプローチを行う施策を講じる必要があります。
“店舗とオンラインのミックス戦略”
ここまで考察した流れから店舗ビジネスを展開されている企業は、店舗の位置付けを“消費者とのタッチポイントとの1つ”として捉えることをおすすめします。
そのため「店舗の役割」は何か、そして「デジタル」の役割は何かをまずは明確にする必要があります。実際にタッチポイントの増加により、店頭だけでは消費者が意思決定をしなくなってきている、というデータも出ています。
今までは下記のようなフローが一般的だったのではないでしょうか。
1.店舗へ来店してもらうための認知施策を打つ
2.来店してもらい接客を行い購入
つまり、「店舗認知」から「商品認知」、そして「関心」「購入動機付け」までを全て店舗で行なっている施策です。店舗によってはこのフローに下記のような変化が起きています。
1.店舗へ来店してもらうための認知施策を打つ
2.来店してもらい、商品認知
3.自宅からECサイトで再度商品を認識
4.WEBサイト上で商品比較を行い購入
認知経路は一緒だとしても、「関心を持ち」「購入をする」というフェーズが複雑化することで意思決定経路が増えてきているということがポイントになってきています。
参照元:https://www.adobe.com/jp/insights/160302-consumer-behavior-survey-2016.html
“変化する店舗の役割”
店舗が担うべき今後の役割、それは“店舗(オフライン)でしか受けられない上質さの追求”です。例えば下記のデータをご覧ください。
こちらは「なぜ店舗に足を運ぶのか」を聞いたアンケート結果になります。
消費者が店舗に求めているものは、そこでしか味わうことのできない「触れる」「話す」などのいわゆる“五感”に訴えかける内容だということが分かります。
その中でも「触る」「試す」などの商品の機能的価値を体験するものは、おそらく技術の発展に伴いデジタル上でも体験できるようになるでしょう。
(例えば既に試着をシェアできるサービスも存在します。
参照元:https://bizzine.jp/article/detail/3506?p=2)
では、「店舗でサービスを提供する理由」を明確にしているものは何か。
ここを考える上で大切なことは「時間の使い方」ではないでしょうか。移動時間なども含めて多大なコストを割いてでも行きたくなる「空間」の価値がこれからは向上するのではないかと考えています。
ECサイトやポータルサイトなどのデジタル上で取得できる情報だけを備えただけでは、もはや店舗は存在する意味はなくなってきていると言えるでしょう。
・「デジタル」の役割
デジタルの強みは何と言っても「利用する手軽さ」にあります。
上記は消費者のECサイトへの期待値の変化を表したアンケートですが、日常生活での買い物はECサイトで十分という考えを持つ消費者も出てきています。また、今後さらにこの割合は増えていく傾向にあると言われています。
消費者が新型コロナウイルス拡大以後、デジタル接触が上がっていることは周知の事実ですが、ここから分かることはその中でも「デシタル上で購買まで完結できるか」が大きなポイントになるでしょう。
つまり、上記に挙げた購買の意思決定を促す「店舗での役割」もオンライン上で担う必要性が強くなって来ている、ということが言えます。
・「オンラインで店舗の役割を担う」とは?
では実際にオンラインで「店舗の役割」を担うとはどういうことでしょうか。
店舗営業でも「売上の高い」スタッフはいらっしゃると思います。ここでの「店舗の役割」とはオンライン上でも消費者にプロフェッショナルなスタッフから受けられる接客と同じ体験をしてもらうということです。この「体験のレベルアップ」を行う施策を総称して「オンライン接客」と定義づけています。
・今までのWEBサイトとオンライン接客の違い
既存のWEBサイトとオンライン接客の考え方は、「コミュニケーションを取れるか」という観点で大きく異なります。つまり、「手軽に情報を取得しに来たユーザー」に対して「上質な接客」を行うことで、「体験価値」の向上をオンライン接客では行えるようになります。
“具体的なオンライン接客の施策について”
オンライン接客のポイントは下記になります。
・店舗に行かなくても同水準の接客が受けられる
・消費者の好きなタイミングで提案を受けられる
このポイントを押さえると、店舗とオンラインの強みを掛け合わせた魅力のある施策になります。特に自分では意思決定しにくい商品の場合、「プロにアドバイスをもらいたい」と思う消費者は多いでしょう。そんな時に店舗に行かなくても「おすすめ」してもらえるという手軽さが安心感につながり購入までを後押しできます。
・オンライン接客の種類
オンライン接客は現在大きく2パターンの方法で実施されています。
1.有人チャットを利用する場合
オンライン上でコミュニケーションを取るにあたって比較的導入ハードルが低いのが、この有人チャットでのオンライン接客です。
有人チャットとは、チャットのプラットフォームを利用してオペレーターなどの「人」がお客様である「人」のアンサーに回答していくシステムになります。
2.WEB会議システムを利用する場合
ZoomなどのWEB会議システムを利用すると、さらにリアルに近いオンライン接客を行うことが可能になります。
例えば、今治タオルのメーカーIKEUCHI ORGANIC 株式会社さんの事例ですが、「お店に気軽に足を運んでいた時のように、店舗スタッフと会話を楽しみたい」「大切な方へのギフトを、タオルソムリエに相談して選びたい」というお客様のご要望に応じて、スタッフが自宅からタオルソムリエとしてZoomでの接客を行っているようです。
オンライン接客がまだまだ黎明期であることは間違いないですが、これから浸透していくことにより、下記のような店舗とオンラインのミックスの、より利便性の高い社会になっていくでしょう。
・オンラインでもオフラインと同様の接客を受けることができる
・オフラインはオフラインだけの上質な空間へ変化していく
大切なことは「“オンライン化”とは“オフラインの代替”ではない」ということです。
オンラインとオフラインをシームレスに捉えて消費者へのアプローチをより強固にしていくことで、今まで以上にお客様との関係性を作っていくことが大切になると言えるでしょう。
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▼このような内容が分かります
・コロナ禍における小売業を取り巻く現状
・店舗の接客をデジタル化するための方法
・小売業のオンライン接客事例